
太陽光発電所のメンテナンスチェックって、具体的にどこを確認するんですか?

分かりやすいものとして、JPEAが「太陽光発電事業の評価ガイド」で太陽光発電所簡易チェックシートを公開しているのでご紹介したいと思います。
1.簡易チェックの目的とは?
長期にわたって安定した太陽光発電所を運営するのに必要な役割を果たすチェックシート、一緒にみていきましょう。

太陽光発電所は、改正FIT法(2017(平成29)年4月施行)により、設備認定から事業計画認定へと移行。保守・維持管理、事業終了後の撤去・処分計画、標識設置、認定情報の公表などが義務化・厳格化され、違反時には改善命令や認定取消の措置があり得ます。事業用太陽光の運転開始期限(原則3年)なども導入されました。
JPEA「太陽光発電事業の評価ガイド」は2018年制定され、2019年改定を経て2024年1月31日に改定。
評価項目は「①権原・法令手続き」「②土木・構造」「③発電設備」
の3分野に整理され、法改正対応や地域共生の観点を強化しています。
また、評価項目一覧(PDF/Excel)や簡易チェックシートも公開されています。
簡易チェックシートは、「太陽光発電事業の評価ガイド」 (太陽光発電事業の評価ガイド策定委員会 2018年6月制定、2019年4月改定、評価ガイド普及促進委員会による改定2024年1月)を参考にして、太陽光発電事業が適切に行われているかどうかを簡易に評価・確認し、問題個所の早期発見及び是正の助けとすることを目的として作成されています。

簡易チェックの判定結果はあくまで簡易なものです。より精緻な評価を行う場合には「太陽光発電事業の評価ガイド」を利活用されることを推奨します。
2.JPEA「太陽光発電所 簡易チェックシート」
「判定の項目とチェック欄」の下に、評価ガイドの構成に沿って、現場・書類の両面で早期に課題把握できるよう項目が抽出されています。①・➁・③で示されています(各項目は評価ガイドの3分野とFIT法の事業計画認定要件に対応)。
チェック項目「①権原・法令手続き」

- 事業計画認定の有効性(設備ID/認定日/運転開始期限の把握・遵守)
- 系統連系契約の確認(連系承諾+工事費負担金契約の有無)
- 標識設置(事業者名・設備ID・緊急連絡先など外部から見やすく掲示)
- 撤去・処分計画(事業終了時の設備・廃棄物処理の計画妥当性)
- 関係法令手続の網羅(都市計画、宅地造成/盛土規制、森林法、消防法、環境関連など)
- 地域との関係構築(説明会・事前周知の実施、苦情対応記録)と委託先管理(契約・指示・実績記録)
※最新の周知・説明義務等の運用は資源エネ庁公開情報を参照。
チェック項目「②土木・構造」


- 敷地・造成関連図書の整備(地盤調査、造成計画、施工記録)
- 法面・擁壁・排水の健全性(侵食/崩落/滞水の有無)
- 架台・基礎の設計・施工適合(風雪荷重、腐食・緩み、締付管理)
- 安全設備(フェンス、出入口、標識、避難経路)
チェック項目「③発電設備・運用」


- モジュール状態(破損・汚損・PID・ホットスポット)
- 配線・接続箱・集電箱(固定・防水・絶縁抵抗の適正)
- パワコン・受変電(動作・冷却・ファームウェア管理・更新履歴)
- 監視・計測・駆け付け体制(異常検知→出動→是正の記録)
- 定期点検・保守(頻度、記録、是正措置)
※「事業計画策定ガイドライン」の運用・保守要件参照。 - 出力制御対応手順(系統要請時の通知・操作・記録)
- 災害・非常時対応(避雷・自立運転の扱い、復旧計画・訓練)
判定
上記の「判定の項目とチェック欄」からチェック欄を合計します。
判定の項目ジャンル |
チェックの数 |
|
A欄 |
B欄 |
|
| 1.設置場所・法令手続等についての判定 | 個 | 個 |
| 2.土木・構造物についての判定 | 個 | 個 |
| 3.発電設備についての判定 | 個 | 個 |

B欄のチェックの数が1個以上
⇒ 評価ガイドにもとづく評価を行って問題個所を特定し是正しましょう。
特に、以下のような方はただちに是正することをお勧めします。法令違反に対しては認定廃止を含む罰則が法に定められています。
★「1.設置場所・法令手続等についての判定」で「フェンス等の設置・標識の設置」でB欄に☑した方
!! フェンス等の設置、標識の設置は改正FIT法で義務化されています。
★「2.土木・構造物についての判定」で「架台を手で押す」でB欄に☑した方
!! 技術基準への適合義務に違反している可能性があります。
★「3.発電設備についての判定」の「保守点検を行っているか」でB欄に☑した方
!! 保守点検は改正FIT法で義務化されています。
☆B欄のチェックの数が0個
⇒ おおむね良好ではありますが、本ガイドはあくまで簡易な判定であり適正さを保証するものではありません。
更に詳しく事業継続リスクを評価する場合は、評価ガイドにもとづく評価を実施しましょう。
太陽光発電所のよくある誤解
よくある誤解について、JPEA「太陽光発電事業の評価ガイド」の解説で紹介されていますのでご紹介します。
1.

標識?誰も確認しに来たりしないからつけなくても大丈夫。
フェンスも適当にロープでも張っとけばいいんでしょ。

標識を設置することは義務です。つけていない場合、国から改善命令が出されることがあります。それに従わなかった場合、認定取消の処分があります。フェンスも同様ですから注意しましょう!

2.

開発許可は必要ないって国土交通省も言ってるよね?
だから、市役所や県庁とは何も協議してないよ。

国土交通省は、一般的な太陽光発電所建設は都市計画法上の開発行為にはあたらないと言っているだけで、森林法などほかの法令に基づく許可も不要だと言っているのではありません。どんな手続きが必要か、必ず市役所や県庁に相談してくださいね。
3.

もう発電開始しているし、今さら市役所や県庁に相談に行けって言われても…。それに、これまでだって何も言われたことないからいいんじゃないかな。

法令で許可や届出等の手続が定められている場合、違反に対しては行政処分に加えて刑事罰が定められています。
森林法(林地開発許可)や農地法(農地転用)など、多くの法令で代表者に懲役を含む刑罰が科せられるほか法人も罰せられることになっています。
4.

林地開発許可が必要な地域とは聞いているけど、私の発電所は6千㎡だし、隣の発電所(5千㎡)は全く関係ないほかの人が事業しているので、許可は必要ないと聞いてるよ。

森林法では、隣接する開発を一団の開とみなして、その面積が1万㎡を超えた場合には、許可が必要であるとしています。さらに、この場合に事業者ごとに許可を申請するのではなく、一つの団地につき一つの許可、つまり事業者が共同して一つの許可を申請することとされています。
ちなみに、地域森林計画の区域で1万㎡ を超える土地を2年以上に分けて開発した場合でも許可は必要となります。上記と同じく、各年の計画ではなく全体の計画に対する許可が必要とされます。いわゆる分譲型の発電所の方は特に注意してくださいね。
5.

発電所敷地の雨水は市の水路に放流しているよ。
放流同意なんてとってないよ。ほかの住宅だって放流しているよ。

水路に放流するには水路管理者の許可が必要です。住宅は開発の際に許可を取得していることが多いのでそのように見えるのではないでしょうか。
6.

設計とか施工の適正さなんて事業主が決めることでしょ。
壊れたら直すのは事業主なんだし、ダメなときは発電やめるだけだよ。

FIT法は、20年間にわたって固定価格で買い取ることを保証すると同時に、事業主が安定的に発電事業を行う義務を課しています。
更に、あらゆる発電所の設置者は、電気事業法による保安責任があります。
安全でない設備は法令違反です。
7.

解体撤去の計画なんて知らないね。FITの期間が終わったら設備は放置だよ。土地を使うことになった時に考えたらいいよ。

FIT法は、固定価格買取期間後も発電事業が継続され、再生可能エネルギー発電が拡大することを目指しています。
発電事業の継続をお願いします。
なお、多くの場合、許可条件に開発後の維持管理が義務付けされていますので、開発した区域を放置することはできません。
8.

解体業者から、太陽電池モジュール(パネル)を中古パネルとして売ることにして見積もりを取れば解体処分費が安くなると聞いたけど。

解体した時に太陽電池モジュールを再利用することは望ましいことです。
しかしながら、再利用できないものまで再利用できるかのようにすれば、処分費が不足し違法投棄を招くことになります。
違法投棄に対しては厳しい罰則があります。
適正な処分費を計上するようにしましょう。
9.

太陽電池モジュール(パネル)を処分したいのだけど、どうすればよいのかわからない。
家電リサイクルみたいな制度があるのかな?

太陽電池モジュールは、住宅用の発電設備にもちいていたものをその住宅にお住まいの方が処分する場合を除いて産業廃棄物として処分しなければなりません。
また、含まれる成分によって処分場のタイプが異なります。基本的には管理型の処分場での処理が必要となります。
投資前提の20年間の固定価格買取期間にわたり、長期安定運用で発電量を確保することが重要です。
設計・施工・運用・手続きの不備は発電中断や認定取消など重大リスクに直結します。
最新の制度情報は資源エネルギー庁の「なっとく!再生可能エネルギー」で随時更新されています。
より詳細な評価やレポート化が必要な場合は、評価ガイド本体(本文・参考資料・評価項目一覧)を直接活用することを推奨します。
まとめ

太陽光発電所の簡易チェックについてご紹介してきました。
「権原・法令手続き」「土木・構造」「発電設備・運用」について、チェック項目を参考にしつつぜひ簡易チェックしてみてください。
太陽光発電においてパネルの維持・管理のための適切なメンテナンスは必要不可欠です。
しかし、低圧発電所は売電による投資目的で運用されているものが大半であり、費用対効果を見つつメンテナンスを行うことも重要です。
費用対効果を見るに当たっては、「行うメンテナンスがどれだけ売電収入に貢献するか」、という視点で判断するといいでしょう。売電収入は発電量に直結します。つまりは「得られる発電量」と、「発電量を維持するためのメンテナンスコスト」を照らし合わせて判断するのが理想です。
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